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やる気がでない原因と改善策‐仕事,勉強,病気

やる気がでない原因と改善策‐仕事,勉強,病気について公認心理師が解説

こんにちは。公認心理師の川島です。

今日のテーマは
「やる気が出ない」
です。

改善するお悩み
・やる気が出ない
・何をやるにも無気力
・布団から出たくない

全体の目次
・やる気の意味とは
・簡易診断,チェック
・学習性-無気力
・モラトリアム型
・精神疾患型

はじめに

私たちがやる気が出ない状態になってしまうとき、その原因は多岐に渡ります。

ネット上ではさまざまな対処法がありますが、網羅的に記述したサイトはなく、時には不適切な対処を提案しているコラムも見受けられます。

心理師としては、このような状態では無気力をさらに深めてしまう人がいるのでは…と懸念しています。

例えばやる気が出ない時に、もっと行動すべき!という方法を提案されることがあります。しかし、症状が深刻な場合には、やる気が出ない状態を悪化させてしまうことにもつながります。

誤った対処の危険性

 

そこで当コラムでは、心理学、精神医学の観点からやる気が出ない状態を分類し、それぞれに適した対処法を解説していきたいと思います。

中途半端に読むと、かえって間違えた対処法に行きついてしまうこともあります。

まずは全体を読んでみて、当てはまると感じる箇所を精読頂けると幸いです。

もしお役に立てたなら、初学者向け心理学講座でもお待ちしています。

やる気が出ないの意味

やる気が出ない状態は、心理学的には「無気力症候群」と呼びます。

無気力症候群とは

無気力症候群はさまざまな心的原因や病気により現れる症状です。心理学の世界では「アパシー」として研究されることが多いです。

意味としては以下のように定義されています。

本来なら反応すべき感情体験が生起せず、無感動,無関心,無感情,感情鈍麻になる状態
(心理学辞典,1999,一部簡略化)

例えば、無気力症候群になると、
・ご飯がおいしく感じない
・誰とも会いたくない
・バラエティを見ても笑えない
・体が重か感じる
など心と体に悪影響が現れます。

歴史

アパシー研究が初めに広まったのは、第一次世界大戦後でした。戦争で傷ついて帰還した兵士の多くに、日常生活での無気力感があり、研究されていきました。

その後、無気力の研究は、うつ病、認知症、モラトリアムなどさまざまな分野である意味で、広い範囲で研究されているワードになっています。

無気力症候群

 

3つの分類と診断

やる気が出ない状態になってしまう原因を大きく分けると、

① 学習性無力感型
② モラトリアム型
③ 精神疾患型

上記の3つがあります。やる気が出ない状態は、これらの要因がかけ合わさって現れます。以下それぞれについて、対処法と合わせて解説していきます。

成果を把握するため、定期的にこちらの診断でチェックをしてみてください。

①学習性無力感型

チェックしてみよう

まずは以下の項目にあてはまるか考えてみてください。

長期間ストレスにさらされている
(育児,長時間労働,日常的なDV,セクハラ)
挫折や失敗が続いている
仕事などで自分の裁量がない
自由を失っている感覚がある


複数あてはまる感覚がある方は、セリグマン(Martin E. P. Seligman)が提唱した「学習性無力感」にあてはまるかもしれません。

学習性無力感は、上手くいかない状態が続き、自信を喪失することで「自分は何をやってもダメなんだ…」という気持ちことを意味します。

学習性無力感とは

ミハイ・チクセントミハイは自分のスキルや作業の難易度によって、やる気が出ない状態になってしまうことを示唆しています。

縦軸「難易度」
横軸「スキルの高さ」

になります。以下の図を概観してみてください。

少し難解な図ですが、やる気が出ない状態になりやすい方は

「難易度が高すぎる」
「自分のスキルが低くすぎる」

場合によく発生します。

改善策

学習性無力感についての改善策を以下にまとめました。一通りを読んだ後に展開して、ご自身にあてはまる箇所がある場合は試してみてください。

① タスクを少なくする
学習修正無力感の方は、手当たり次第に行動してうまく行かなくなっている方がとても多いです。まずは優先順位を決めて、不要なタスクを少なくすることをオススメします。

こちらのコラムで心を整理する方法を解説しています。参考にしてみてください。

② 断る力を身につける
やる気出ない状態なりやすい人は、自分のキャパシティを超えて頑張ろうとします。しかし、仕事を抱え込みすぎると、集中力が持たず、1つ1つの仕事が投げやりになってしまいます。

結果的に自分にも相手にもプラスにも不利益を被ってしまうのです。断るべき時には、しっかり断るようにしましょう。詳しくはこちらの断り方コラムを参考にしてみてください。

③ 環境を変える
パワハラ、セクハラ、仕事環境が悪いなど、自分ではどうしようもない環境にある場合は、限界を見極め、環境を変えるのも1つの手段です。

例えば、仕事は生きていくために行うものです。もし、自分自身を苦しめているのであれば、本末転倒です。

今の環境で精一杯努力をして、それでもダメな場合は、自分の中で居場所を変える線引きも考えておきましょう。詳しくはこちらの限界設定コラムを参照ください。

④ 身体を休める
学習性無力感型の方は度を超えて、体のだるさ、頭痛、不眠など体の不調を抱えていることがあります。体の健康は心の健康と深い結びつきがあります。

身体の調子が悪いな…と感じる方はこちらの心と体の健康-ストレス発散コラムを参考にしてみてください。

無気力症候群の問題

 

モラトリアム型

モラトリアム型とは

まずは以下の項目にあてはまるか検討してみてください。

目指す目標がない
目標を達成してしまった
(大学合格,就職が決まった,子育てが終わった)
力を発揮している感じがしない
人生が退屈だと思う


上記にあてはまる感覚が多い方は、モラトリアム型のやる気がない状態にあてはまる可能性があります。モラトリアムとは、夢中になるための猶予期間という意味があります。

力は有り余っているものの、目標を見失ってる状態で、注力すべきところがわからない方に多く見られます。

モラトリアム型とは

ミハイ・チクセントミハイの図を改めて確認してみましょう。

右下の「退屈」は、「スキルが高く」「難易度が低い」状態です。このエリアは、飽きた、やりがいがないという心理状態になりやすくなります。心理学的には以下の言葉をよく使います。

・燃え尽き症候群
仕事、スポーツで、一生懸命頑張って、結果が出たり、引退した後に起こります。

・空の巣症候群
主に子どもが独り立ちした後に起こります。

・スチューデント・アパシー
学生(特に大学生)に多くみられるやる気が出ない状態です。受験という大きな目標をクリアした後、次の目標を見つけ出せずに、喪失感をのもと勉強に精を出せなくなります。

改善策

モラトリアム型の方は新たな目標を発見することがポイントとなります。元々スキルが高い方が多いので、一度目標を見つけると、驚くほどに改善することもあります。

少し辛いですが自分との対話を繰り返し、新たな目標を立てることで充実した日々に戻ることができるでしょう。改善策を以下にまとめました。

全体を読んだ後に展開して、ご自身にあてはまる改善策がある場合は試してみてください。

① モラトリアムを理解
モラトリアム型の方はまずは自分自身の状態を把握することをオススメします。
燃え尽き症候群
空の巣症候群
モラトリアム
このコラムで当てはまりそうなものを一読してみると良いでしょう。

② フロー状態を目指す
モラトリアム型を改善する大きなポイントは、打ち込めるもの探していくという点にあります。打ち込むものを見つけると、心理学的に、ゾーンに入る、フロー状態になると言われています。

目標を見つけたい、日々を充実させたいという方はこちらのフロー状態,心理学コラムを参考にしてみてください。

③ 好奇心を持つ
モラトリアムになると、食わず嫌いが激しくなり、好奇心が乏しくなる方がいます。最初はエンジンがかからなくてもOKです。まずは行動していく中で、だんだんと興味関心が湧いてくることもあります。

最近日々の繰り返しでワクワクしない…という方はこちらの好奇心コラムを参考にしてみてください。

④ 決断力をつける
モラトリアムになると、重い腰が上がらなくなり、ついつい後回しにしてしまうことがあります。やろうと思っても、だらだらしてしまい、気が付いたら時間が無くなっている…という方はこちらの決断力コラムを参考にしてみてください。

無気力症候群の特徴

精神疾患型

3つ目にあげられるのが精神疾患型です。やる気が出ない状態は、複数の精神疾患に見られる症状です。まずは以下の項目にあてはまるか検討してみてください。

消えてなくなりたいと思う
ぼうっとしてしまい支離滅裂なことをいう
若い時は元気だったが、高齢になり無気力になった
普段は平気だが、特定の場所に行くと極端に無気力になる


このような感覚がある方は、精神疾患型のやる気が出ない状態の可能性があります。

精神疾患,むなしい

うつ病

うつ病の症状の一つとして「やる気が出ない」が挙げられます。日常生活全般に対して無気力になり、自分には価値がない…と考えるようになります。

やらなきゃと頭でわかっていても体と心が思うように動きません。

適応障害

失恋、パワハラ、挫折、家族との死別などがあったときに、とてつもない虚無感に襲われることがあります。このような場合は、適応障害と診断されることがあります。

学習性無力感型で強く症状が出るときに当てはまることがあります。

統合失調症

統合失調症は気持ちがうまくまとまらなくなる心の病気です。症状としては、喜怒哀楽がなくなり、目を合わせない、無表情といった症状が発生します。

認知症

高齢になると脳機能が低下し、以前は行動的だったのに、急に無気力になることがあります。

退却神経症

日本の医師の笠原嘉は1960年代に「退却神経症」という用語で無気力を説明しています。退却神経症とは、学業や仕事などで、あえて意欲をなくすことで、苦痛な出来事から退却しようとする症状です。

改善策

うつ病、適応障害、統合失調症、などに当てはまる可能性を感じた方は、心療内科か精神科を利用するのが基本となります。以下動画で解説をしました。上記の精神疾患にあてはまる方は参考にしてみてください。

①心療内科,精神科,心理療法の理解

まずは心療内科、精神科、心理療法の基本的な知識を抑えましょう。

②種類ごとの知識を深めよう

それぞれの精神疾患について関連コラム、動画をお伝えします。理解を深めたいコラムを参考にしてみてください。

*うつ病
うつ病の理解-厚生労働省ホームページ

*適応障害

*統合失調症
統合失調症の理解-厚生労働省ホームページ

*認知症
高齢の無気力-認知症コラム

*退却神経症
退却神経症-ウィキペディア

 

おしらせ

心理療法を独学で学ぶことに不安がある場合は、専門家の元でしっかり学ぶこともお勧めしています。 私たち公認心理師・精神保健福祉士は、無気力の改善、やる気が持続する目標設定のコツ、対人不安の改善を目指し、心理学講座を開催しています。

体系的に勉強されたい方のご参加をぜひお待ちしています。

執筆者も講師をしています(^^)
 ・やる気が持続する‐行動療法
 ・無気力とうまく付き合うマインドフルネス療法
 ・人生の目標とアイデンティティ
初学者向け心理学教教室を開催しています

 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・ミハイ・チクセントミハイ(2000)フロー体験 喜びの現象学
・対人援助職従事者におけるバーンアウトと感情労働の関係性について 49 事例分析を通した検討
・桜井茂男・大谷住子 完全主義は無気力を予測できるのか 奈良教育大学教育研究所紀要 1995,31, 171–175. 
・認知行動療法を学ぶ(2011,下山晴彦編 金剛出版)
・認知行動療法(1995,坂野雄二 日本評論社)
・川島書店 山口 創著  よくわかる臨床心理学